大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(ネ)230号 判決

川口秀雄が控訴組合を代表する資格があるか否かにつきまず判断する。

控訴組合が中小企業等協同組合法に基く企業組合であることは当事者間に争がないから、組合の総会によつて選挙せられた理事が理事会を構成し、その決議により組合を代表すべき理事が定められるというべきである。

成立に争のない乙第一、第二号証の一、第四号証及び原審証人金関力也の供述によれば、有田正夫、川口秀雄、久保田豊吉の三名は昭和二十六年中控訴組合の臨時総会において三年の任期をもつてその理事に選挙せられ有田正夫が代表理事に互選せられたことを認め得る。

よつてその後川口秀雄が控訴組合の代表理事(控訴組合の定款上は理事長と称することは争がない。)に選任せられたか否かにつき按ずるに、成立に争のない甲第八乃至第十号証、乙第三号証、原審証人実川吉男、古田けい、当審における控訴組合代表者川口秀雄本人の各供述を総合すれば、川口秀雄は昭和三十一年三月理事有田正夫に通知することなく、久保田豊吉とともに控訴組合の理事会を開き控訴組合の組合総会の招集を決議し(右決議の効力はしばらく措く)、直ちに古田けい外十数名(これらが組合員であるか否かはしばらく措く)にその招集の通知をした上、昭和三十一年四月五日東京都千代田区神田旭町十四番地舟出旅館において古田けい外十名の出席を得て控訴組合の総会なるものを開会し、同総会において理事改選の結果川口秀雄、片山恵江、実川吉男が理事に選挙せられ、直ちに同所で右三名の出席を得て組合理事会を開き川口秀雄が代表理事に互選せられたとのことを認め得る。

しかるに被控訴人は右総会の右決議は法律上存在しないか、しからずとするも無効であると主張し、控訴組合はこれに対して右総会決議の瑕疵は訴をもつてのみ主張しうべく抗弁によつては主張し得ないと抗争するので、まず右この点につき按ずるに、少くとも総会の決議が法律上存在しないと認むべき場合には何人もこれを訴訟上訴又は抗弁をもつて主張し得ると解するのを相当とするから控訴組合の右主張は採用しない。

よつて右総会の決議の効力につき判断するに、控訴組合は次の如く主張する。即ち控訴組合の総会招集は理事会の決議にもとずき原則として代表理事がこれを行うのであつて、代表理事でない理事は総会の招集をなしえないと解すべきであるが控訴組合において当時の代表理事であつた被控訴人有田が控訴組合の財産を勝手に流用処分するなど多くの不正を働き任務を解怠して組合員の屡々の請求にも拘らず総会を招集しないので、当時控訴組合の専務理事であつた川口秀雄が控訴組合の定款十九条第二項の「専務理事は理事長事故あるときはその職務を代行する。」旨の規定に従い、代表理事たる被控訴人有田に事故あるものとして同人を代行して右総会を招集したと主張する。そこで調べてみると、控訴組合の定数に控訴組合主張のような条項のあることは当事者間に争がないが、代表理事たる被控訴人有田に当時控訴組合の業務を執行できないような事故があつたことはこれを認めるに足りる証拠がないから、右総会の招集を定めた前示理事会の決議の効力及び川口秀雄が当時専務理事であつたか否かにつき判断するまでもなく、同人は代表理事の職務を代行して右総会を招集する権限がなかつたと認められる。従つてその余の争点につき判断をまつことなく、右総会は招集権限のない者の招集にかゝり法律上総会としては存在せず右総会の決議もまた法律上存在しないというべきである。

よつて右川口秀雄外二名は右決議により理事に選挙されてもその地位を取得するに由なく、従つて右三名が川口秀雄を控訴組合の代表理事に選任する旨決議しても同人はその地位を取得し得ないものというべきである。しかしてその他新に理事の選任があつた旨の主張並に立証のない本件においては、昭和二十六年中に選任された理事が依然として理事としての権利義務を有したものと認むべく、従つて又新に代表理事が選任されたとの主張並に立証のない本件にあつては、有田正夫が依然として代表理事であつたものと認むべきである。

(松田 猪俣 沖野)

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